自分を守るための重要な手段
「逃げる」という行動には、多くの人がネガティブな印象を抱きがちです。「責任を果たさない」「努力を怠る」「弱い」といった否定的なイメージがつきまとい、「逃げることは悪い」と考える人も少なくありません。しかし、本当に「逃げること」は悪いことなのでしょうか。状況や文脈を踏まえれば、「逃げる」という行為は必ずしも悪ではなく、むしろ自分を守るための重要な手段である場合もあります。
逃げるとはどういうことか
「逃げる」という行動には多様な意味があります。一つは、直接的な危険や脅威から身体を守るための行動です。例えば、自然災害や暴力から逃れることは、生命を守るための当然の行為です。この場合、逃げることは本能的かつ合理的な選択であり、決して悪いことではありません。
もう一つは、精神的・社会的な状況から逃れる行動です。職場の過度なストレスや、学校でのいじめ、人間関係のトラブルなど、自分にとって耐え難い状況から距離を置くことも「逃げる」と表現されます。このような場合、「逃げる」という行動は、単なる回避ではなく、自分を守るための選択肢として重要な意味を持つことがあります。
逃げることのメリット
逃げることには、自分を守るための積極的な側面があります。無理をして困難な状況に耐え続けることが必ずしも正しいとは限らず、むしろ状況が悪化し、自分や周囲の人にさらなる悪影響を与える場合もあります。そのため、適切なタイミングで逃げることは、長期的に見てプラスになることもあります。
(1) 自己保存のための逃げ
身体的・精神的な健康を守るために、危険な状況から逃げることは重要です。例えば、ブラック企業での長時間労働やハラスメントを耐え続けることで、心身に大きな負担がかかり、最終的にはうつ病や適応障害に陥ることがあります。このような場合、「逃げる」=職場を辞める決断をすることは、自分の命や健康を守るための合理的な選択です。
(2) 問題解決のための逃げ
時には、物理的または心理的に距離を取ることで、問題を冷静に見つめ直し、解決への道筋を考えられるようになります。困難な状況の中で無理に耐え続けると、視野が狭くなり、状況を悪化させる選択をしてしまうこともあります。一度逃げて距離を置くことで、冷静な判断が可能となり、適切な対応が取れる場合があります。
逃げることのデメリットとその克服法
もちろん、逃げることがすべての場面で最善の選択とは限りません。逃げることで一時的な安心感が得られる反面、以下のようなデメリットが生じる場合もあります。
(1) 問題の先送り
逃げることで、目の前の問題を一時的に避けることができても、根本的な解決にはつながらない場合があります。例えば、苦手な人間関係を避け続けることで、対人スキルが育たず、他の場面でも同じ問題に直面することがあります。このような場合、逃げた後に問題を見直し、適切に対処する努力が必要です。
(2) 罪悪感や自己否定感
「逃げることは悪い」という固定観念が強い場合、逃げた自分を責めてしまい、罪悪感や自己否定感を抱くことがあります。このような感情が続くと、自己肯定感が低下し、さらなるストレスの原因となります。しかし、このような感情が生じた際には、「逃げることは悪ではなく、自分を守るための選択肢であった」と自分に言い聞かせ、逃げた理由を客観的に振り返ることで、自己否定を軽減することができます。
逃げることを判断するための基準
逃げることが良いか悪いかは、状況や目的によって異なります。以下の基準を参考に、自分が逃げるべきかどうかを判断することが重要です。
- 健康を害する状況かどうか:心身に重大な悪影響がある場合は、逃げることが優先されます。
- 解決可能な問題かどうか:自分の努力やサポートを受けることで改善が期待できる問題であれば、すぐに逃げるのではなく、解決策を考えることが望ましいです。
- 逃げた後の選択肢があるかどうか:逃げた後にどのような行動を取るかを事前に考えておくことが大切です。計画的な逃げは、ただの回避行動とは異なり、次のステップへの道を開きます。
逃げることは自己を守る選択肢の一つ
「逃げること」は、必ずしも悪いことではなく、自分を守るための重要な手段である場合があります。特に、心身の健康が脅かされる状況では、逃げることは自己保存のために必要不可欠です。ただし、逃げた後に問題を見直し、将来的に同じ状況を繰り返さないための対策を考えることも重要です。
私たちは「逃げる=悪い」という固定観念を見直し、「状況に応じた適切な選択」として逃げる行動を考えるべきです。逃げることで新たな可能性を見出し、より良い環境や解決策を探ることができるのです。
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