カウンセリングで話す内容を考えておいたほうが効率的
「人と話すことが苦手なので・・・」と、カウンセリングを受けることを躊躇う人がいます。
しかし、カウンセリングは、パーティーでの挨拶ではありませんし、会社の企画会議のプレゼンでもありません。
したがって、上手に話す必要はないのです。相手に何かをアピールするわけではありませんし、いいことを言って感動させたりすることを考える必要もないのです。
ただひたすらに、自分が悩んでいること、困っていること、つらい気持ち、苦しい思いなどを、飾ることなく、自分らしく話せばいいのです。
いちいち言葉を選んだりする必要もありません。カウンセリングルームでは、何を言っても構わないのです。時に、誰かの悪口を言ったっていいのです。
にもかかわらず、日々、カウンセリングを行っていると、時々、何も言わずに座っているだけの人がいます。
そして、どうすればいいのかわからなくなり、うつむいてしまう・・・。
このように、意を決してカウンセリングを受けに来たのはいいものの、カウンセラーを前にして、何を話せばいいのかわからなくなってしまう人がいるのです。
もちろん、そのような場合はカウンセラーからお声がけをして、話しやすいように誘導することで、堰を切ったように話し始めるというケースもあります。
しかし、多くの場合は、考えながら、少しずつ、思い出すように、ゆっくりと話すものです。
話すペースは人によってまちまちですから、自分のペースで話してもらえればいいのですが、何の準備もない場合は、考えながら話すことになり、その分、ペースがゆっくりになります。
もちろん、それでも構わないのですが、あまりにもゆっくりでは、時間がもったいないと思うはずです。
カウンセリングの時間は無制限ではありません。限られた時間の中で、自分が抱えている悩みや問題について話し、解決策を見い出したいはずです。
むろん、1回のカウンセリングで答えや解決策が見つかるとは限りません。何回も、何十回も対話を重ねることで、ようやく答えを見い出すことができる場合もあります。
いずれにせよ、最初の段階で話す内容を考えておいたほうが、スムーズにカウンセリングを開始できるのは言うまでもありません。
「何を話そうかな?」→「●●について話そう」
カウンセリングでは、上手に話す必要はありませんが、話す内容を考え、用意しておいたほうが、スムーズに対話を開始し、進めていくことができます。
そのためには、あらかじめ、「何を話そうかな?」と考え、そして、「●●について話そう」と、ある程度、テーマを決めておいたほうが効率的です。
もちろん、カウンセリングというのは効率重視の作業ではありませんし、急いで進めればいいというものでもありません。むしろ、ゆっくりと時間をかける必要がある場合も多くあります。
ただ、無駄な時間は極力削減したいものです。カウンセリングというのは、相談者がお金を払って時間を買っているわけですから、その時間をできるだけ有効に活用してほしいのです。
だからこそ、事前に「何を話そうかな?」と考え、「●●について話そう」と決めてからカウンセリングを受けてほしいのです。
話す内容を考えることでカウンセリングを受ける前に変化が始まる
カウンセリングを受ける前に「何を話そうかな?」と考えることで、すでにその人の心の中では変化が始まります。
それまでは自分の頭の中だけで考え、思い悩んできたことをカウンセラーに話そうと意識することによって、その人の心の中で停滞していたものが動き始めるからです。
つまり、カウンセラーに話す前に、すでにカウンセリングが始まっていると言うことができるのです。
ただ、実際、カウンセリングを受けると、当初、考えていたこととは違う話が出てくるということがあります。
これは、「カウンセラーに話す」ということを意識したことによって、その人の心はすでに次の段階に移行したということかもしれないのです。それだけでも、大きな一歩を踏み出したと言えるでしょう。
そして、このような場合は、無理に話の内容や方向性を修正しようとせずに、思うがままに、心に浮かぶがままに、話しを続ければいいのです。
本人が予定していたこととは違った話が思わず出てきたということは、心の奥底でその話をすることを望んでいたということかもしれないのです。
その欲求を否定したり我慢したりせず、心から湧き上がるがままに、口から出るがままに発してしまえばいいのです。
いわばそれは、その人の「心の声」であり、「本音」であり、もっとも伝えたいこと、わかってほしいことである可能性があるのです。
思わず出た話から、その時の自分の本当の気持ちや、どんなことを考えていたのかに気づくことができることがあります。
それによって、自分を客観的に見つめ直し、自分自身をより深く知ることになるのです。
考えておいた話をすることで「収まりがつく」
カウンセリングを受ける前に話す内容を考えておくことは、効率の面だけでメリットがあるわけではありません。
前もって、「●●について話そう」と決めておいた話をしっかりすることで、「収まりがつく」いうことがあります。
この「収まりがつく」ということには、いろいろな形があり、違った言葉で表現されることがあります。
たとえば、気持ちに整理がついて納得がいく、収拾をつける、けじめをつける、総括する、あるいは、引きずってきた過去のことを「終わったこと」として納得できる、または、今はどうしようもないことを「考えても仕方がない」と休止符を打ったり、いったん棚上げできるといったことです。
また、話そうと考えていたことをしっかり話すことで、長年、心に抱えて重荷になっていた秘密などを、カウンセリングルームという安全な場所で打ち明けることで、「荷降ろし」をするという効果が得られる場合も少なくありません。
このような人たちは、自分なりに納得したり、幕引きをすることによって、次の段階に進むことができると考えられます。そのため、比較的短期間でカウンセリングを終了する人が多く見られます。
この場合、カウンセリングは、いわばひとつの「儀式」、あるいは「通過儀礼」のようなものと言えるのかもしれません。そして、カウンセラーは、その「立会人」、あるいは「見届け人」「証人」のような立場の存在といったところでしょうか。
カウンセリングで同じ話を繰り返してもいい
事前に話す内容を考えて用意しておいたとしても、1回のカウンセリングで話したくらいで納得できたり、悩みが解決するとは限りません。むしろ、そのほうが多いと言っていいでしょう。
ですから、何度でも繰り返し、話していってほしいのです。同じ話が繰り返されたとしても構わないのです。
同じ話が繰り返されるということは、それだけ重要なことであり、かつ、未だ納得したり、解決できていないことである証拠と言えるでしょう。
だから、何度でも、何度でも、繰り返し話していってほしいのです。あなたなりに収まりがついたり、荷降ろしができるまで、納得がいくまで話してください。
それを丁寧に聞いていくのが私たちカウンセラーの仕事なのです。
ですから、遠慮することなく、自由に、何度でも繰り返し、話してください。
「同じ話」は実はまったく「同じ話」ではない
さまざまな相談者の方の話しを聞いていると、同じ話の繰り返しで、まるで堂々巡りのような状態になることがあります。
しかし、このような場合であっても、ただ同じ話を延々と繰り返しているようでありながら、実は少しずつ変化しているものなのです。
つまり、「同じ話」は、繰り返されるうちに、次第に「同じ話」ではなくなっていくものなのです。
小さな変化を見逃さないカウンセリング
私たちカウンセラーは、その小さな変化を見逃さずにキャッチし、相談者の方と一緒に育てていきます。
そうすることで、たとえ時間がかかろうとも、少しずつ着実に前に進んでいけるように、サポートしていく。
それこそが、カウンセラーの使命だと肝に銘じ、日々のカウンセリングに取り組んでいるのです。