突然起きる強い不安感の正体は?
不安感というものは誰にでも起こりうるものです。心配事や悩み事があったり、怖い体験をした時などには、誰だって不安感を抱くものです。それが人として当然の心理でもあります。
しかし、これといった理由がないのに、突然、いても立ってもいられないほど強い不安感が起きたとしたら、これは当たり前のこととは言えません。
それはもしかするとうつ病の症状である可能性があるので要注意です。
では、この正体不明の不安感とは、いったいどういうものなのでしょうか?
正体不明の不安感とは?
一般に、うつ病の人は、非常に強い不安感を抱えているものです。
しかし、その不安感は誰でも抱くような根拠(理由)のある不安感ではないのが大きな特徴です。
つまり、何の理由もないのに、不安を感じてしまう、わけもなく不安で仕方がないという心理状態なのです。
うつ病ではない人にとっては非常にわかりにくいことなので、もう少し説明を加えることとしましょう。
うつ病の人が抱く不安感というのは、具体的に何に不安を抱えているかの対象はありません。
では、何に対する不安感なのかというと、それは自分自身に対してだったり、何か漠然としたものへの不安だったりするのです。
うつ病の人は、その不安感が原因で精神的に不安定になりやすい傾向が強くあるのです。
うつ病が疑われる不安感の症状
誰もが抱く不安感とは異なり、うつ病が疑われる不安感の場合は、通常とは違った反応があらわれます。
もし、自分自身や身のまわりの人に次のような症状が見られる場合は、「うつ病かもしれない」と考え、早めに対処することをお勧めします。
・ちょっとしたことですぐにイライラする
・理由もなく泣いてしまう
・わけもなく不安、怖い、動悸がする
・大声で叫びたくなる
・用もないのに部屋の中などを動き回る
・外出ができない
以上のような症状が見られる場合は、通常の不安感ではなく、うつ病の症状としての不安感である可能性が高いと言えます。
決して放置せずに、精神科や心療内科を受診するようにしましょう。
参考までに、実際にうつ病になった経験がある人の体験談をご紹介しましょう。
≪30代女性の話≫
はっきりとした時期はわかりませんが、いつしか仕事上の本当に些細なことがやけに気になるようになり、すぐにイライラするようになってしまいました。
まだ更年期でもないのに変だなぁとは思いましたが、仕事が忙しかったので、疲れているせいかなぁと、あまり気にかけていませんでした。
そうこうしているうちに、特に何があるわけでもないのに、いつも気分がソワソワしている状態になりました。
とにかく気持ちが落ち着かないので、用もないのに会社内を無駄に動き回ってしまい、いつまでたっても仕事が終わらないという状態になってしまいました。
こうなると当然、帰宅時間も遅くなってしまい、家に着いた時には疲労困憊状態でした。
完全に疲れ切っているので、夕食を口にする気にもなれませんでした。やっとの思いでシャワーを浴びて、髪もロクに乾かさないままベッドに横になっても、どういうわけか目が冴えてしまい、何時間も寝つけませんでした。
朝、起きても、全然寝た感じがせず、前日の疲れが残ったままで、ベッドから起き上がるのがやっとでした。
会社に行くのが本当につらかったですが、無理やり自分を奮い立たせて出勤しているという感じでした。
そんなある日、ほんの些細なことが気に障ってしまい、オフィスでいきなり「いいかげんにしてよ!」と叫んでしまったんです。
我に返ると、周りのみんなは唖然としていました。その視線に耐えられなくなって、逃げるようにトイレに駆け込むと、涙がこぼれてきて止まらなくなってしまいました。
どれくらい時間がたったでしょうか。しばらくして気持ちが落ち着いてから、オフィスに戻って仕事を続けました。みんな何も言いませんでしたが、内心ではどう思っていたのでしょうか・・・。
その翌日だったと思いますが、比較的、仲のいい同僚がみんなのいないところでソッと聞いてくれたんです。「疲れてるんじゃない?」って。そして、「病院で診てもらったほうがいいんじゃない?」と受診を勧めてくれたんです。
自分でもどうかしていると思っていたので、最初は抵抗がありましたが、思い切ってメンタルクリニックで診てもらったんです。
そうしたら、案の定、「うつ病」と診断されました。でも、幸い、まだ軽い段階だったので、早めに対処したことでひどくならずに済んだのでよかったと思っています。
うつ病の症状は人それぞれ
30代女性の体験談を読んで、みなさんはどんな感想を持ったでしょうか?
一般に「うつ病」と聞くと、「茫然としている」とか「反応が遅い」「動きが鈍い」といったイメージが強いのではないでしょうか?
そのイメージからすると、前記の体験談はまったく逆の症状と言えるでしょう。
そのため、うつ病である疑いを抱かず放置してしまい、病状を悪化させ、気づいた時には重症になっていて、休職して療養生活に入ったとしても、回復して職場復帰するまでに長い期間を要することになってしまうのです。
このように、うつ病の症状は人それぞれであり、正体不明の不安感からイライラに発展し、用もないのに動き回る人であったとしても、「うつ病」と診断されるケースが少なくないのです。
不安感があらわれるのはうつ病だけではない
うつ病では強い不安感があらわれるという特徴がありますが、だからといって、不安感があるからうつ病だとは言い切れません。
つまり、強い不安感があらわれる心の病気は他にもたくさんあるのです。
不安感があらわれる心の病気として代表的なものとして挙げられるのが、その名が示す通り「不安障害」というものがあります。
これは、厳密には特定の病気の名前ではなく、心の病気のカテゴリ(くくり)のひとつです。
この不安障害には、「全般性不安障害」「特定の恐怖症」「パニック障害」があり、それぞれの特徴と症状があり、治療法も異なります。
「全般性不安障害」は、対象のない持続的な不安が特徴の病気です。
「特定の恐怖症」は、特定の対象や状況に対して著しい恐怖を感じるというものです。
「パニック障害」は、突然、強い恐怖や不安に襲われ、動悸、混乱、めまい、吐き気、呼吸困難といった症状があらわれます。この状態を「パニック発作」と呼びますが、その原因は特定されず、ストレスや恐怖によって引き起こされます。
こうした不安障害からうつ病へと進展するケースもあり、また、両者が併発するケースも少なくありません。
さらに、不安感が原因で情緒が不安定になり、突然、気分が高揚して叫びたくなったり、泣きわめいたりすることもあります。このような場合は、「躁うつ病(双極性障害)」である可能性があります。
ともあれ、うつ病の人は周りからはわからない不安感に支配されて苦しんでいるので、その不安を和らげてあげることが求められます。
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