うつ病で苦しいのは支える家族も同じ
うつ病になると、辛く苦しい思いをするのは当然のことながら、うつ病になった本人であることは言うまでもありません。
病気の症状による苦しみはもちろんのことながら、その苦しみをわかってもらえない苦しみという、二重の苦悩に支配されることになります。
こうした、「本人にしかわからない苦しみ」は、筆舌に尽くしがたいほど辛く苦しいものですが、苦しいのは本人だけではないことを忘れてはいけません。
そうです、うつ病の人を支える家族も、苦しんでいるのです。
最初はどのように接すればいいのかわからず、非常に戸惑いますし、うつ病の人が苦しんでいる姿を見ても、何もしてあげられない、助けてあげられない、代わってあげることもできないといったもどかしさ、そしてなにより、大切な家族が苦しんでいることへの苦しみを抱えています。
また、うつ病の人は、自分を責める思いから、自ら命を絶とうとしてしまうこともあるので、一人ぼっちにしないようにそばにいるようにするなど、心配で気が休まらないものです。
そして、うつ病の人は、心が不安定になっていますから、うつ病の症状による辛さのあまり、家族にひどいことを言って、深く傷つけてしまうこともあります。
さらに、うつ病になった人が、一家の大黒柱だった場合には、働くことができなくなったことで家計に大きな打撃を与えてしまうこともあります。
経済的な穴を埋めるために、奥さんがパートに出たり、出費をギリギリまで削減したりして、余裕のない生活を余儀なくされるとも多々あります。
こうしたことは、決してうつ病になった人に責任があるわけではありませんが、家族がうつ病になるということは、それほど一家に大きな影響を与えるのです。
うつ病闘病を支えてくれた家族に感謝
家族の誰かがうつ病になると、それを支える家族も大変な苦労を背負うことになります。辛く苦しい日々が長く続くことになり、心身ともに疲弊してしまうこともあります。
ですから、うつ病が回復し、心に余裕ができてきたら、家族に感謝の気持ちを伝えてほしいものです。
辛く苦しい思いをし、時には涙しながらも、決してあきらめず、大切な人を見捨てることなく、ずっと寄り添って支えてくれた家族には、どんなに感謝をしてもしきれないほどではないかと思います。
うつ病で闘病中だったころのことを思い出してみてください。
もちろん、自分が辛かったことも思い出されてしまうかもしれませんが、同時に、家族に対しても「辛い思いをさせてしまった」とか、時には「当たってしまった」「ひどいことを言ってしまった」といったことに思い当たるのではないでしょうか。
そして、「本当に申し訳なかった」と、そんな思いになるはずです。
そのようなときは、自分を責めるのではなく、素直に謝り、感謝の言葉をちゃんと伝えましょう。
口に出して直接伝えるのが照れくさいなら、手紙やメールで伝えるのも一つの手でしょう。
特に、配偶者(夫や妻)のように、もっとも身近で支えてくれた家族には、親身に寄り添って支えてくれたことを感謝するだけではなく、辛く苦しい気持ちをぶつけてしまったりしたことを素直に謝ることも忘れないでください。
また、離れて暮らす親や兄弟などにも心配をかけてしまったかもしれません。「おかげで元気になったよ」ということを伝えてあげるだけで構わないので、近況報告をしてあげましょう。特に親に対しては、それだけでも立派な親孝行になるはずです。
さらに、子供がいる場合には、その子供に対しても同様に、今の状態と気持ちをきちんと伝えてあげましょう。
親がうつ病になって苦しんでいる姿を見てきた子供は、事態が理解できず大きな戸惑いと不安を抱いたはずです。病気のことを理解できたとしても、親が苦しんでいることに心を痛めていたに違いないのです。
そんな子供に対しては、「心配かけたね。もう元気になったから大丈夫だよ」と伝えてあげましょう。
特別なことをしたり、贈り物をしたりなどする必要はないのです。心のこもった感謝の言葉、それだけで、支えてきた家族は報われるのです。
自分の力だけでうつ病を治したわけではないのです。家族の支えがあってこそ、今の自分があるということを忘れず、感謝の言葉を伝えましょう。