「うつ病の人に『頑張って!』は禁句」?
一般に、「うつ病の人に『頑張って!』は禁句」と言われているのをご存知の人も多いかもしれません。
テレビや新聞・雑誌などのマスコミによって、このような知識が広まったようです。
うつ病など心の病に関する知識が世間に広まるのは大変良いことなのですが、残念なことに誤った情報が広まり、定着しているというケースもあるので気をつける必要があります。
この「うつ病の人に『頑張って!』は禁句」というのも、そのひとつと言っていいでしょう。
決して間違いというわけではないのですが、すべてのうつ病患者に当てはまるとは限らないということを覚えておいてほしいのです。
うつ病患者は腫物ではない
うつ病の人に「頑張って」と言ってはいけないという情報が独り歩きしてしまい、うつ病が回復して社会復帰を果たした人のことを、まるで腫れ物に触るように扱ってしまう傾向が生じてしまったのです。
それにより、せっかく社会復帰したにもかかわらず、それまでとは違った生きづらさや居心地の悪さを抱いてしまう人が少なくないのです。
うつ病の人に「頑張って」と言ってはいけない時期とは?
うつ病の人に「頑張って」と言ってはいけない時期と、そうではない時期というものがあります。
うつ病の症状が重い時期(急性期)には、自分のことを責める傾向が強く見られるので、この時期に「頑張って」という言葉をかけるのは避けるべきでしょう。
急性期のうつ病患者は、悲観的な思い込みに支配されているので、健康な時なら「励ましてくれている」と前向きにとらえられることでも、「励まし」と受け止められなくなっているのです。
そのような時に「頑張って」と声をかけると、うつ病の人は、「みんなに心配ばかりかけて、自分はダメ人間だ」とか、「自分は頑張っていないダメなやつだ」といったふうに、歪んだとらえ方をしてしまい、自分をひどく責めてしまうのです。
ですから、うつ病の急性期にある人にとっては、「頑張って」という言葉はプレッシャーとなってしまい、追いつめてしまう恐れがあるので、決して使わないようにしましょう。
では、どうすればいいのか、ということになりますが、うつ病の急性期にある人には、励ましの言葉など必要ありません。ただ寄り添って、辛い気持ちを理解するようにしてあげることが一番なのです。
うつ病でも「頑張って」と言ってもOKなケース
うつ病の症状が改善し、これから社会復帰を目指す人や、すでに社会復帰を果たした人に対しては、「頑張って」と言ってもOKです。
この時期の人にとっての「頑張って」は、この言葉の本来の意味である「励まし」であり、周囲の期待を実感できる言葉であり、本人にとっては大きな自信につながるものとなるのです。
ただし、気をつけなければならないことがあります。
それは、プレッシャーを与えないようにするということです。
たとえば、「頑張れ。これができないと大変だから」とか、「この案件は重要だから、失敗しないように」といった言い方は、一見すると励ましているように見えますが、実は本人にとっては非常に大きなプレッシャーを与えることになります。
ですから、このような場合であれば、「何も心配しないでやってみよう」とか、「大変そうに感じるかもしれないけど、ちゃんとフォローするから大丈夫」といった感じで、不安感を抱かせずに、背中をちょっと押してあげるような言い方が理想的です。
このように、ひとくちにうつ病と言っても、その状態によって、「頑張って」と言ってはいけない時期もあれば、むしろ有効な場合もあるということを覚えておいてください。
そして、身近な人がうつ病になった時や、回復した時に役立ててほしいものです。