日常生活に支障をきたす状態
アルコール依存症は、飲酒のコントロールが効かなくなり、アルコールを摂取し続けることで日常生活に支障をきたす状態のことを指します。この病気は、精神的・身体的な健康に重大な影響を与え、社会的・職業的な機能にも悪影響を及ぼすことが多くあります。アルコール依存症は進行性であり、放置すると症状が悪化するため、早期の認識と治療が重要です。
自分ではコントロールできなくなる
アルコール依存症は、国際的な診断基準であるICD-10やDSM-5で明確に定義されています。DSM-5では「アルコール使用障害」として分類され、軽度、中等度、重度と段階的に評価されます。一般的には以下のような特徴があります:
- 飲酒のコントロールができない:意図した以上に多く飲んでしまったり、飲むつもりのない状況で飲酒してしまうことが頻繁に起こります。
- 飲酒に対する強い欲求:アルコールを強く求める欲望があり、そのために他の活動や責任を放棄することがあります。
- 耐性の発生:同じ量のアルコールでは酔いを感じなくなり、より多くのアルコールを摂取しなければ満足できなくなります。
- 離脱症状:飲酒を止めると、手の震えや発汗、不安、イライラなどの身体的・精神的な不快感が生じ、これを避けるために再び飲酒するという悪循環に陥ります。
すべてを失うことも
アルコール依存症は、身体的・精神的・社会的にさまざまな症状を引き起こします。以下はその主な症状です:
- 身体的症状:アルコール依存が進行すると、肝臓や脳、胃腸に重大なダメージを与えます。具体的には肝硬変、アルコール性肝炎、胃潰瘍、膵炎、脳の萎縮などのリスクが高まります。また、飲酒を止めた際に離脱症状(手の震え、発汗、不眠、幻覚、痙攣など)が現れることもあります。
- 精神的症状:アルコールの乱用によって、うつ病や不安障害、記憶力の低下などが引き起こされることがあります。認知機能が低下するため、判断力や集中力も衰え、日常の意思決定や問題解決が困難になることがあります。
- 社会的影響:アルコール依存症の影響は、家庭や職場、社会生活にも波及します。家族との関係が悪化し、離婚や家庭内暴力が発生することがあります。また、仕事や学業への支障が出て、失業や経済的困難を引き起こすことも少なくありません。
さまざまな要因で引き起こされる
アルコール依存症の原因は複雑で、遺伝的要因、環境要因、心理的要因が相互に影響し合っています。
- 遺伝的要因:家族にアルコール依存症の患者がいる場合、その人がアルコール依存症になるリスクが高くなることが研究で示されています。これは、遺伝的にアルコールに対する耐性や感受性が異なることが関係しています。
- 環境的要因:家庭や社会環境も依存症の発症に大きな影響を与えます。例えば、アルコールが日常的に手に入りやすい環境や、飲酒が文化的に奨励される環境では、依存症のリスクが高まる可能性があります。また、ストレスや孤独感、トラウマ(心理的外傷)もアルコール依存症の一因となります。
- 心理的要因:アルコールを使ってストレスや不安、感情的な痛みを和らげようとする人は、次第に依存状態に陥ることがあります。特に抑うつ気分や不安感が強い場合、アルコールに逃避する傾向が強くなります。
アルコール依存症の診断は?
アルコール依存症は、医師による診断が必要です。診断には、飲酒行動のパターンや、飲酒がもたらす身体的・心理的・社会的な影響を確認するための質問が行われます。具体的には、「飲酒を減らそうとしてもできなかった」「飲酒のために家族や友人、職場で問題が生じた」「飲酒を止めた時に不快な離脱症状が現れた」など、依存を示す兆候を確認します。
また、飲酒に関連する身体的な問題(肝機能障害、脳の萎縮など)が現れているかどうかの検査も行われることがあります。
断酒が一番の治療法
アルコール依存症の治療には、身体的なケアと精神的なサポートの両方が必要です。
- 断酒:最も重要な治療法は断酒です。アルコール依存症の患者は、アルコールを完全に断つことが必要です。依存が進行している場合、医師の指導の下で徐々に減酒することが求められることもありますが、最終的には完全な断酒を目指します。
- 薬物療法:断酒をサポートするために、抗酒薬や離脱症状を軽減するための薬が処方されることがあります。抗酒薬は、アルコールを摂取した際に不快な症状を引き起こすことで、飲酒を抑制する効果があります。
- カウンセリング・心理療法:心理的なサポートとして、認知行動療法(CBT)や動機づけ面接(MI)などが行われます。これらの療法では、飲酒に対する衝動やストレスの管理方法を学び、健康的な生活習慣を取り戻すためのスキルを養います。
- 自助グループ:アルコール依存症患者が集まり、経験を共有する自助グループ(AA:アルコホーリクス・アノニマス)は、断酒を継続するための強力なサポートとなります。グループ内での相互支援が、回復に向けての強いモチベーションを維持する助けとなります。
予防と再発防止のために
アルコール依存症は再発のリスクが高いため、長期的な予防と再発防止の取り組みが必要です。家族や友人のサポート、定期的なカウンセリングの受診、健康的な生活習慣の維持が再発防止に効果的です。また、飲酒のきっかけとなるストレスや孤独感を軽減するための環境整備や、飲酒に替わる新しい趣味を見つけることも有効です。
早期の治療とサポートが重要
アルコール依存症は、身体的・精神的・社会的に深刻な問題を引き起こす病気です。しかし、早期に治療を受け、適切なサポートを得ることで、断酒し健康を取り戻すことが可能です。家族や周囲の理解と支援も重要であり、長期的な回復を目指して、断酒の努力を継続することが求められます。
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