大人の発達障害とは?
大人の発達障害とは、成人年齢になってから診断される発達障害のことを指します。発達障害は本来、生まれつきの脳の特性によって起こるものであり、子どものころから特性は存在しています。しかし、幼少期には特性が「個性」として受け止められていたり、家庭や学校環境のサポートによって問題が目立たなかったため、大人になってから仕事や人間関係で困難を感じ、初めて診断を受けるケースが増えています。
主なタイプとその特徴
大人の発達障害には以下のようなタイプがあります。
1. 自閉スペクトラム症(ASD)
ASDの特性としては、対人関係やコミュニケーションが苦手、暗黙のルールや空気が読めない、こだわりが強いといった傾向が挙げられます。職場での雑談や報連相(報告・連絡・相談)がうまくできず、孤立したり誤解を受けたりすることがあります。また、細部にこだわりすぎて全体の進行が遅れることもあります。
2. 注意欠如・多動症(ADHD)
ADHDでは、不注意、多動性、衝動性が主な特徴です。大人の場合、多動性は目立たなくなっていることもありますが、落ち着きがなかったり、頭の中が常に忙しく感じたりします。不注意型では、仕事のミスや遅刻、忘れ物が多くなりやすく、衝動型では感情を抑えきれずに人間関係でトラブルを起こすこともあります。
3. 学習障害(SLD)
大人になっても、読み書きや計算などの特定の能力に著しい困難がある場合があります。職場での書類作成や数字の扱いが苦手で業務に支障をきたすことがあります。
発見のきっかけ
多くの場合、大人になってから仕事や家庭生活の中で「生きづらさ」を感じるようになり、自分自身や家族、上司が「発達障害ではないか」と気づきます。たとえば、以下のような状況で発覚することがあります:
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同じミスを繰り返し、職場で評価が下がる
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人間関係で衝突や孤立が多い
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極端にストレスを感じやすく、うつ状態に陥る
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子どもの発達障害が分かり、自身にも似た特性があると気づく
二次障害のリスク
大人の発達障害は、周囲から理解されにくい上、自分自身も理由が分からず苦しみ続けることが多いため、うつ病、不安障害、対人恐怖、アルコール依存などの二次障害を引き起こしやすくなります。「自分はダメな人間だ」と自己否定が強まり、生活や社会参加が困難になるケースもあります。
対応と支援
発達障害は完治するものではありませんが、特性を理解し、適切な対応をすることで生きやすくすることが可能です。
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診断と自己理解
専門機関での診断を受けることで、自分の特性を知ることが第一歩です。診断によって原因が明確になることで、自己理解が深まり、必要な支援や対処法を見つけやすくなります。 -
職場での配慮
ミスを防ぐためのメモの活用、作業手順の可視化、静かな作業スペースの提供など、具体的な工夫で仕事のしやすさが向上します。近年では「合理的配慮」のもと、企業が発達障害者への支援を行うケースも増えています。 -
対人スキルの向上
ソーシャルスキルトレーニング(SST)やカウンセリングを通じて、人間関係での困難を減らす訓練を行うことも有効です。 -
福祉・医療サービスの活用
発達障害者支援センターや就労支援事業所など、大人向けの公的支援も存在します。また、必要に応じて薬物療法が検討されることもあります。
大人の発達障害は、「怠けている」「協調性がない」と誤解されやすい特性を持つため、本人にとっても周囲にとっても理解が難しいことがあります。しかし、それは本人の責任ではなく、脳の特性に由来するものです。特性を否定するのではなく、理解し活かすことで、能力を発揮できる環境を整えることが重要です。誰もがその人らしく働き、生きる社会を実現するには、周囲の理解と支援が不可欠です。