カウンセリングの歴史について
心理カウンセリングでは、相談者の心に寄り添い、悩みの解消や問題の解決のための最良の方法を一緒に考えていきます。
そして、相談者が自分の力で対処できるようにサポートしていくことを目的としています。
今では誰もが知っている「カウンセリング」ですが、そもそもいつごろから始まったのかを知っている人は多くはないでしょう。
ちょっとした豆知識として、また、話しのネタとして知っておいてみてはいかがでしょうか?
アメリカで始まったカウンセリング
そもそもカウンセリングは、20世紀初めにアメリカで始まったとされています。
といっても、現在のカウンセリングとはまったく異なるもので、高校生を対象とした職業指導だったとされいます。
当時のアメリカは工業化が進み、経済が大きく発展している時代でした。
そのため、人手が必要になり、多くの雇用が進みました。
ところが、求職者にその仕事が適しているかを考えずにどんどん雇い入れるということをしてしまったため、仕事や職場に適応できず、すぐに辞めては別の仕事に就くということを繰り返す労働者が急増してしまいました。
その一方では、貧しさから窃盗や強盗、その他、金品を奪うために犯罪に走る人も増加しました。
このような状態を改善するため、後に「職業指導運動」の創始者と呼ばれることになるフランク・パーソンズという人物が、「ボストン職業相談所」を開設しました。これは、今から110年以上も前の1908年のことでした。
パーソンズが開設した「ボストン職業相談所」では、職業カウンセリングが行われました。
そして、その「カウンセリング」を行う「相談員」のことを「カウンセラー」と呼んだのです。
これが、「カウンセリング」と「カウンセラー」の始まりだったのです。
さらにここから、カウンセリングは進化と発展を遂げていくことになります。
指示的カウンセリングの失敗
「カウンセリング」の誕生からしばらく経過した1930年代。
この時代は、精神療法(心理療法)を行う資格があるのは精神科医だけとされていました。
そのため、精神疾患の治療においては、精神科医が患者に対して指示や指導を直接的に行い、患者がそれを実践する方法が一般的となっていました。
これは、医師が積極的に指示・指導を行うことから「指示的カウンセリング」と呼ばれています。
しかし、残念ながら、この方法は決してうまく機能していたとは言い難かったのでした。
なぜなら、医学的知識に基づいて、精神科医が判断した一方的な指示・指導となるため、個々の患者の状態を的確に把握していたとは言えない部分があったからです。
また、患者の側も、そうした医師からの指示・指導を正しく実践できる人がいる一方では、まったく実践できない人もいたため、期待した効果が得られないことが少なくなかったのです。
現代に通じる非指示的カウンセリングの誕生
さらに時を経て1940年代に入ると、アメリカの臨床心理学者、カール・ロジャーズが、「来談者中心療法」を確立しました。
これは、医師が積極的に指示・指導を行う指示的カウンセリングとは対照的に「非指示的カウンセリング」と呼ばれています。
というのも、患者に対する指示・指導はできるだけ行わないものだったからです。
その代わりに、患者の話にしっかり耳を傾け、その内容に「共感」したり、「受容」したりすることに重きを置きました。
この共感・受容を繰り返すことで、その人が自発的に判断したり、行動したりできるように促していくというものでした。
つまり、従来の指示的カウンセリングとはまったく逆のやり方であったという点において実に画期的な手法であったと言うことができるのです。
この「非指示的カウンセリング」には、画期的なことが他にもありました。
それまでの「指示的カウンセリング」は、医師から患者への指示・指導が中心であることから、両者の間に上下関係が存在していました。
しかし、「非指示的カウンセリング」では、相談者を「患者」ではなく「クライエント」と呼び、カウンセラーと対等の立場としました。
さらに、第二次世界大戦後には、戦争の恐怖や凄惨さを目の当たりにした経験から神経症になった軍人の症状を緩和したり、平和な一般社会への復帰をサポートするために多くの心理カウンセラーが尽力しました。
こうした献身的な活動が広く社会に認知され、高く評価されたことにより、カウンセラーやカウンセリングというものへの注目が高まり、精神(心理)療法の研究が活発に行われるようになり、ますます発展していくこととなったのです。
日本ではすぐに定着しなかったカウンセリング
その後、「非指示的カウンセリング(来談者中心療法)」は日本でも紹介され、多くの医療現場に取り入れられ、広く浸透していくことになります。
その結果として、現在でもカウンセリングの基本的な手法として多くの心理カウンセラーの手により実践されているのです。
ただ、すぐに日本国内に広まり定着したというわけではありませんでした。
そもそも、1951年にカウンセリングが日本で初めて行われたとされています。
当時、日本ではアメリカの教育制度を取り入れ、学校カリキュラムを改善しました。
これにより、一部の中学校、高等学校に心理カウンセラーが配置されました。
これは、今で言う「学校カウンセラー」ということになるかもしれません。
ということは、実に革新的なことが早くから行われていたことになりますが、実状はまったく異なるものでした。
なぜなら、当時はまだカウンセラーを養成する機関が存在していなかったため、きちんとしたカウンセリングを行える人材が不足していたからです。
しかも、カウンセリングというもの自体がまだまだ一般に浸透していなかったこともあり、しっかりと定着するには至らなかったのです。
時代の変化によって必要性が認識される
しかし、時代を経るにつれ、経済発展、社会の複雑化・スピードが急速に進んだことで状況は一変しました。
社会の劇的とも言える変化に伴い、うつ病や総合失調症などの心の病に苦しむ人が急増しました。
さらに、自殺や不登校、ひきこもりなどが大きな社会問題となりました。
こうしたことにより、さまざまな世代の人たちの「心のケア」の必要性が認識されるようになりました。
そして、「カウンセリング」というものの存在が見直され、重要視されるようになったのです。
特に、相談者の悩みや問題を心理的なアプローチによって解決に導いていく「心理カウンセラー」は、生きづらさを抱えている人が多い、この困難な時代において、必要不可欠な存在となっているのです。
歴史を知ったらカウンセラーになろう!
せっかくカウンセリングの歴史を知ったのですから、どうせならそのカウンセリングを行うカウンセラーになってみませんか?
カウンセリングサロンクローバーを運営する日本カウンセリング普及推進協会では、各種のカウンセリングを行うだけではなく、そのカウンセリングを行うカウンセラーの育成にも力を入れています。
詳しくは〈心理カウンセラーを目指す/「聞く力」を身につける (clover-spk.com)〉に記載してありますので参考にしてみてください。
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